野球は、ピッチャーの良し悪しが試合の結果を左右します。
特にコントロールが悪いピッチャーの場合は、ファーボールでランナーをためては長打を打たれ、大量失点につながっているケースがよくあります。コントロールの悪いピッチャーの後ろで守っている野手もまた、守備のリズムが乱れてエラーをしてしまう、といった悪循環を招いてしまうこともありますね。
いくら速いボールを投げることができても、コントロールが悪ければ、良い投手とは言えません。
ここでは、ピッチャーのコントロールを良くするための投げ方と練習方法を紹介します。
それでは、行ってみましょう!
静かに、おとなしく投げる(力まない)
力んで、力いっぱいボールを投げていませんか?
静かに、おとなしく投げましょう!
力んだフォームは、あごが上がってしまいます。体の開きが早くなり、頭の位置も大きくぶれてしまいます。肘は下がり、リリースポイントも安定しません。このように、力んだ投球フォームでは、自分の体をコントロールすることが出来なくなりますから、ボールを思い通りにコントロールすることも難しくなります。
フォームが暴れているときは、「もっと速いボールを投げよう」「速いボールで抑えよう」という意識が強いときが多いですね。スピードばかりを追い求め、力いっぱい投げていると、ピッチングフォームが狂ってしまいますよ。
また、ピンチで頭に血が上っているような時も、フォームとボールをコントロールできなくなる原因です。
常に冷静なメンタルを保つことも、静かなフォームで投げるときに必要な要素ですね。
元メジャーリーガーの小宮山悟さんも「おとなしいピッチングフォーム」で投げることを薦めています。
静かでおとなしいフォームはコントロールが良くなるだけではなく、スタミナ面やケガ予防の面でもメリットがあります。力んで暴れたフォームでは、どうしてもムダな力が入ってしまって体力を消耗しやすくなりますよね。また、体のいたるところに負担を強いられますので、ケガのリスクも上がります。
これからは「力まず静かに投げる」という意識をもってピッチング練習をしてみてください。コントロールが良くなり試合中の疲労も軽減できるはずです。
重心をあまり上下・前後させない
勢いのあるボール・コントロールの良いを投げるためには、ステップ幅を広くして、ひざを深く曲げることが大切だと思っていませんか?重心を低くすることが球威を増し、低めのコントロールを良くすると思っている選手は多いと思います。
実は、ひざを曲げ、重心位置を下げることにはデメリットがあります。
それは、
- 体が回転しづらくなる
- 体力を消耗する
- ボールが高めに浮く(コントロールが悪くなる)
ということです。
野球で投げたり打ったりするとき、体を回転させるための重要な関節は「股関節」です。
特にステップ脚の股関節のひねり(回旋)が重要になりますが、ステップしたときにひざが深く曲がってしまうと、この股関節が回旋しづらくなってしまうのです。例えるなら、コマの軸が曲がっているようなものです。
実際にやってみるとわかると思いますが、前脚に体重をかけた状態で、①ひざを深く曲げて体を回転させるのと、②ひざを伸ばした状態で体を回転させるのを比べてみると、明らかに②の、ひざを伸ばしたまま体を回転させた時の方がやりやすいのではないでしょうか。
そして、①の方は結構疲れませんか?
小さい動きのわりには体力を消耗してしまいます。これは筋力をかなり使っている証拠であり、効率の良い動きとは言えません。1試合100球近く投げるピッチャーにとっては、疲労の度合いにも大きく差がつくところです。
ボクシングのパンチや空手の蹴りなども、体の回転を使うことで強烈な力を出しますが、この時に軸脚のひざが曲がっていては、強いパンチやキックは打てませんよね。投球動作も同じです。
また、ステップ幅を大きくしてひざを深く曲げると、体重が前脚に乗りづらくなります。そうすると、体重は後ろ脚に残ったままなので、上体を前に倒すことができなくなります。その結果、リリースポイントが早くなり、球の抑えがきかず、高めに浮くボールを投げることになってしまいます。
ステップ幅を広くしてひざを深く曲げると、重心の上下・前後の動きが大きくなり、コントロールを悪くします。
練習方法
投球練習では、うまく体の回転ができるステップ幅・ひざの角度を色々と試しながら探してみましょう!
(広すぎるステップ幅と深すぎるひざの角度に注意)
下半身を安定させる
ピッチャーにとっての下半身は、ロケットの発射台のようなものです。ロケットを打ち上げるときに土台としての発射台が安定していなければ、正確な方向へ強く・高く飛ばすことは出来ませんよね。
ピッチャーがコントロール良くボールを投げるためにも、発射台としての下半身が安定する必要があります。
とくに、踏み出した脚のヒザが外側へ開いてしまう(いわゆるヒザが外に割れる)ことは最も避けなければならない動作の一つです。なぜなら、下半身は地面からのエネルギーを上半身に伝える役割がありますが、踏み出した脚のヒザが割れてしまうと、大きなエネルギーのロスを招いてしまうからです。これでは力強いボールを投げることができません。
また、ヒザが外側に割れることによって、重心も同時に外側にブレてしまいます。コントロール良くボールを投げるためには、重心の横方向のブレをなるべく小さくすることがポイントです。ですから、踏み出した脚のヒザが外側に割れることは、コントロールを悪くしてしまう原因のひとつとなります。
では、このようなヒザの割れを防ぐためには、どのような練習が効果的でしょうか?
下半身の筋力強化として「フォワードステップランジ」を行うことが効果的です。
フォワードステップランジのやりかた
- 両手にダンベルを持つ
- 両足を肩幅程度に開き直立する
- 片脚を大きくまっすぐ前方に踏み出す
- 踏み出した脚の足裏を全体を床につけ、つま先をまっすぐ前か内側に向ける
- 踏み出し脚の股関節とひざ関節をゆっくり曲げる
- 後ろ脚のひざを曲げ、床の3~5㎝上まで下げる
- 踏み出し脚の股関節とひざ関節を伸ばしながら力強く床を押す
- 踏み出した脚を後ろ足の隣に戻す
- 開始位置で直立姿勢をとって止まり、先ほど踏み出した脚と反対側の脚を前に踏み出す
注意点
- 踏み出した足のつま先を、まっすぐ前か内側に向ける
- ひざを、まっすぐ前に向ける(外側や内側にぶれないように)
- 体幹をまっすぐに立てた姿勢を保持する(上体を前後に揺らさない)
負荷量(ダンベルの重さ)
初めの慣れないうちは、ダンベルは使用せず、しっかりとしたフォームで行えるようになることから始めて下さい。小学生や中学生までは、重りを用いなくても自分の体重で行うことで十分なトレーニングになります。ある程度慣れてきた方は、ご自身の筋力や調子に合わせて重さを調整してください。
片手5㎏、両手で10㎏くらいまでで良いでしょう。
回数・セット数
片脚交互に、10回~20回程度を2~3セット程度
「フォワードステップランジ」を行うことで割れないヒザを作り、コントロールを安定させましょう!
リリースポイントを頭で覚える
1球ごとにリリースポイントが違っていたら、コントロールは安定しません。
リリースポイントがずれてしまう原因は、
- 疲労によって抑えがきかなくなる
- 自分の感覚と実際の動きが一致しない
投げすぎ・連投などで筋肉が疲労をすると、本来できるはずのパフォーマンスができなくなってしまいます。特に肩や腕・指先の筋肉疲労が起こると、微妙な調整が効かなくなるので、リリースポイントもずれてしまいコントロールを乱すことになります。
これを予防するには、筋肉の持久力をつけること、効率の良い疲労しにくい投球フォームを身につけることなどが考えられます。
リリースポイントが一定しないもう一つの原因は、自分の感覚と実際の動きが一致していないことが考えられます。
どういうことかというと、例えば、自分ではひじを十分に上げて投げているつもりが、実際はひじが下がって投げている、といったような場合。投げるときのひじの位置の違いは、リリースポイントも大きく変えてしまいますよね。自分の想像した動きと実際の動きがずれているので、当然思ったところにコントロール良く投げることは出来ません。
この自分の感覚と実際の動きを一致させることが出来なければ、いつまでたってもコントロールの改善は見込めません。
頭と体を一致させる練習を、簡単な動きからやってみましょう。
頭と体を一致させるための練習方法
- 肩幅に足を開き直立する
- 目をつぶり、両手を横から肩の高さまで上げる。イメージした通りの場所で止めるように努力する(または、理想のリリースポイントの位置で止める)
- 目を開け、上げた両手が想像した場所と一致しているか確認する(鏡の前で行うと確認しやすいです)
- 両方またはどちらかの手の高さが想像と違っていたら修正し、頭でイメージした場所と実際の手の位置を一致させる
- もう一度、同じように目をつぶり繰り返す
- 何度やっても同じ位置に来るように繰り返し練習する
このような簡単な動きでも、出来ない選手はかなり多いです。
数㎜のリリースポイントの違いが、大きなコントロールミスにつながります。
この練習は、すべての動きの質を上げるのに役立つはずです。ぜひ試してみてください。
内・外角へのコントロール
「科学する野球(ベースボールマガジン社)」の中では、次のように書かれています。
どうすれば内・外角を投げ分けられるか。そのツボは、ヒップの割れめの上部に当たる腰椎を、ホームベースの外角、真ん中、内角に意識して向けて投げるということです。
ちょうどおへその背中側らへんにある背骨を、腰椎といいますが、この腰椎の向きを意識して投げましょう、ということです。
腰椎の代わりに「おへそ」に意識を向けてもいいと思います。
意識の仕方は色々とあります。
- 腰椎(おへそ)を外角に向けて外角の球を投げる。腰椎(おへそ)を内角に向けて内角の球を投げる。というように、狙った方向に腰椎(おへそ)を向けるというもの。
- 腰椎(おへそ)を外角に向けて内角の球を投げる。内角に向けて外角の球を投げる。というように、腰椎(おへそ)の向きと逆方向にボールを投げるというもの。
- 腰椎(おへそ)を真ん中に向けて外角の球を投げるというもの。
いろいろと試しながら投球練習をすることで、自分に合った意識の仕方を見つけてみてはいかがでしょうか。
腰椎(おへそ)は、体の中心に近く、指先のような末端部分に比べると非常に安定しているので、コントロールのしやすい場所です。指先でボールのコントロールをつけるという意識ではなく、より体の中心に近い腰椎でフォームをコントロールするという意識をもつことが大切です。
高低のコントロール
ステップ幅を大きくすると重心位置が下がり、リリースポイントが早くなって、高めにボールが浮いてしまう、ということは先ほど述べました。
低いボールを投げるには、「ステップ幅を狭め、高い位置から角度をつけて投げ込む」ことが大切です。
重心位置が低いと、上体が上向きになってしまってリリースポイントが早くなりますが、重心位置が高いと、上体を前傾しやすくなります。その分、ボールにも角度をつけやすくなり、低めに向かって投げやすくなる、というわけです。
低めのボールを投げようと思って、体を沈めてしまうのは、大きな間違いということです。
臍下丹田に意識を向ける
臍下丹田(せいかたんでん)は、おへそのすぐ下の場所にあります。
目で見てわかる場所ではありませんが、漢方医学では、ここに意識を集中して力を集めると、健康を保ち勇気がわいてくるといわれています。また、肩の力が抜けて冷静さを取り戻すことが出来ます。
ピンチの場面では、冷静さを失って肩に力が入り、コントロールを乱してしまうことが多いですよね。
メンタルの乱れはコントロールの乱れ。
ピッチングのときだけでなく、歩く・座るといった普段の生活のなかでも丹田に力を込める練習をして、試合中でも冷静なメンタルコントロールができるようになりましょう。
まとめ
いかがでしたか?
コントロールは投手の生命線。
今回紹介した7つの方法を意識することで、コントロールは良くなります。
ダイナミックなフォームで投げると、スピードのある力強いボールが投げられそうですが、コントロールの面では、たくさんのデメリットがあります。
コントロールをよくするポイントは、「臍下丹田に力を込めて、頭と心をコントロールすること」です。
そして、「重心を高く、おとなしいフォームで投げる」ことを意識してください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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