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「ラダートレーニング」をやったことはありますか?

ラダーとは「はしご」の意味です。

この、はしご状のトレーニング器具を地面に敷き、そのマスを一歩ずつステップを踏んで進んだり、サイドステップや体のひねりを加えて走ったりすることで体の調整を行います。

さまざまなバリエーションがあり、競技特性に応じて多くの方法が活用されています。



ラダートレーニングの動画

ラダートレーニングの動画(23種類)をとってみました。

カメラアングルが悪くて、細かいステップの方法などがわかりずらいかもしれませんが。

とくにサッカーの練習でよく見かけると思いますが、野球の練習でもウォーミングアップの1つとしてラダートレーニングを取り入れているチームは多いのではないでしょうか。

ラダートレーニングは、ただウォーミングアップで体を温める効果があるだけではありません。

マスの中でステップを踏み体をコントロールしながら走る動きの中には、野球に必要なたくさんの要素が含まれています。

今回は、このラダートレーニングを行うことによって得られるスゴイ効果を5つ紹介します。

それでは行きましょう!

効果その①「野球で使える筋力を作る」

走る筋力

ラダートレーニングでは、野球の動作とくに走る場面で必要な筋力を養うことができます。

ただ単に直線を走る走り方とは違い、ラダートレーニングでは前後左右へのステップや切り返し動作、ひねり動作を繰り返し行います。

野球のプレーでも、ほとんどが一直線で走るわけではありませんよね。守備でボールを追いかけるときは、フライやバウンドに合わせて足を動かします。ランナーとして走る時は、直線で走り抜ける場合もありますが、ほとんどが切り返しや急なストップ・ゴーの繰り返しです。

ラダートレーニングでの切り返しやステップの時、体にかかる負荷は意外に大きいものです。その大きな負荷を支えるためには、脚の力だけではなく体がぶれないようにするための体幹の筋力など、全身の筋力が必要になってきます。ラダートレーニングを繰り返すことで、自然と全身の筋力が鍛えられるわけですね。

バーベルを使ったベンチプレスなどのウェイトトレーニングや腹筋、背筋、スクワットといった基礎トレーニングは、野球の動きとはだいぶ異なります。このようなトレーニングも大事ですが、そこで培った強い筋力を「野球で使える筋肉」に変えていくためには、ラダートレーニングなどを用いて、野球動作に近い形でトレーニングする必要があるわけです。

バランス調整のための筋力

体の左右で筋肉がアンバランスな選手は、切り返しのときにバランスを崩して上手にステップを踏むことができません。そのような選手は、自然とバランスを崩さないように意識しながらラダーを走ることになります。

ですから、ラダートレーニングには筋力のバランスを調整する効果もあります。

継続したトレーニングでバランスよく安定したステップを行えるようになった頃には、走る・捕るといった野球動作で「使える筋力」が備わっていることでしょう。

効果その②「スピードアップ」

「足が速い選手が多い」というのは強いチームの条件の1つでしょう。

野球で「足が速い」と使う言葉を場面はさまざまです。

直線的な足の速さだけではなく、

  • ベースランニングでのコーナーリングの速さ
  • 隙をついて次の塁を狙うときのスタートの速さ
  • 盗塁でトップスピードになるまでの速さ
  • 守備で打球を追うときの一歩目の速さ
  • ピッチャーやキャッチャー、ファースト、サードがバント処理でボールを捕ってすぐに投げるときの速さ
  • 守備の場面での細かなステップワーク
  • 外野手がフライの落下地点まで到達する速さ

など。

「切り替えの速さ」「加速」「バランス」

これらに共通してみられる要素は「切り替えの速さ」「加速」「バランス」ですね。「スピード」とは、これらの要素が組み合わさったものと言えます。

ラダートレーニングをするとき、初めはこの3つを意識しながら行うことが重要です。

  • 左右にステップを踏むときに「切り替え」を速くする。
  • 走り始めたら、できるだけ早く「加速」する。
  • 切り返しのときに体が横にぶれないように「バランス」を保つ。

ただ「早く走ろう!」とだけ意識するよりも、このように要素を分けて考えることで効率よくスピードを上げることができます。

この意識付けに慣れてきたら、しだいに無意識下でも自然にスムーズな体の動きが出来るようになるはずです。

このようなトレーニングを行った結果、ベースランニングのタイムや盗塁数が向上したという研究報告もあります。

「スピード」にスランプはありません。選手1人1人がスピードアップを図れたら、チーム力もアップし、強いチームが出来上がるでしょう。

ラダートレーニングで、この3つの能力を鍛え上げ、スピードスターになりましょう!

効果その③「動的柔軟性アップ」

動的な柔軟性

柔軟性には、静的な柔軟性と動的な柔軟性があります。

静的な柔軟性とは、文字通り動作を静止しているときの柔軟性です。

 

この静的な柔軟性は、基本的なストレッチで柔らかさを獲得していきます。スタティックストレッチと言いますが、痛みを感じない範囲で静かにゆっくりと筋肉を伸ばす方法です。

 

一方、動的な柔軟性とは、実際に動いている最中の体の柔軟性のことです。野球のプレー中の体の柔らかさですね。

静的な状態でいくら筋肉に柔軟性があったとしても、野球の動きをしたときに、その柔軟性が発揮できなければ意味がありません。

ラダートレーニングでは、スタティックストレッチによって培われた静的柔軟性を動的柔軟性に変換する効果があります。

細かなステップだけではなく、ダイナミックにジャンプしたり、関節を大きく動かしながらドリルを行うことで、より野球に適した実践的な柔軟性が得られます。

ほんの少しの柔軟性の差が、ボールを捕れるか捕れないかの差になったりしますよね。

そういう意味では、ウォームアップで柔軟性を少しでも出しておくことは重要なことです。多くのチームでラダートレーニングをウォーミングアップで取り入れているのは、非常に有効だと言えますね。

効果その④「神経‐筋協調性アップ」

外野フライが上がったら、外野手はフライを捕るために、ボールの落下位置に向けて一目散に走らなければいけません。時には体を左右にひねりながらボールを追いかけることもありますよね。

内野手は、細かい足の動きが必要です。特に二遊間は、前後・左右・斜めにボールを追いかけなくてはいけませんから、素早い切り返しやダッシュといったフットワークが不可欠です。

セカンドベース寄りの打球なんかだと、ボールを追いかけるのと同時に、ベースに足を引っかけないように注意しないといけません。さらにランナーがいるときは、ランナーの動きにも目を光らせつつボールを捕りにいき、捕ったと思ったら素早く走りながらスローイングをするわけです。

目と上半身と下半身がバラバラに動きつつも連動してプレーしなければ良いプレーができません。

ラダートレーニングでは、バラバラに動くいくつもの体のパーツを、うまくつなぎ合わせてくれる効果があります。

そして、脳と筋肉をつなぎ、すばやい動きを可能にしてくれる「反射」もラダートレーニングによって開発できます。

このような神経と筋肉を上手に連動させて、無駄なくスムーズに体を動かせる能力のことを「神経‐筋協調性」と言います。

「神経と筋肉の協調性」は、子供のころにとても発達するので、小学生の頃からラダートレーニングをすることで、野球の技術も上達すると考えられますね。

少年野球でも遊び感覚でラダートレーニングをすると、楽しんで出来ると思います。

ぜひ試してみてくださいね。

効果その⑤「ケガ予防」や「リハビリ」に。

スポーツをしていてケガをする原因は、色々とたくさんあります。

  • 外傷(デッドボールや接触プレー、打撲、肉離れなど)
  • 使い過ぎ(オーバーユース)
  • 筋力の低下
  • 筋肉の柔軟性低下
  • 関節が不安定
  • 神経‐筋協調性の低下
  • 姿勢の乱れ
  • 体脂肪が多い
  • 気象条件(気温の低下、上昇、雨、風、雪など)
  • 使用器具の不具合(シューズ、グローブ、バット、ボール、グランドの整備不良など)
  • 社会的環境(不適切な指導、トレーナーの不足など)

そのなかでも、筋力低下、柔軟性低下、神経‐筋協調性、姿勢の乱れなどのは、ラダートレーニングでカバーできる項目ですね。

たとえば、肉離れの原因の一つには、神経‐筋協調性の低下があると言われています。

走っているとき、太ももの筋肉は緊張とリラックスを目まぐるしく繰り返します。緊張とリラックスのスピーディーな切り替えが大事になるわけですが、神経‐筋協調性の低下があると、この切り替えがうまくいかず力を出すタイミングがずれてしまい、肉離れになってしまう場合があるのです。

ラダートレーニングで神経‐筋協調性を高め、肉離れを予防することができるわけです。

また、肉離れなどのケガをしてしまった選手が、復帰に向けてのリハビリの1つとしてラダートレーニングを取り入れることも非常に有効です。

ケガの痛みが引いたらすぐに実践練習に入るのではなく、予備練習としてラダートレーニングをすることで、実践の動きに少しずつ体を慣れさせることができますよね。

注意点

以上のように、野球の練習にとても効果の高いラダートレーニングですが、注意するべきはケガです。

さきほど、ラダートレーニングはケガ予防にもなる、と言ったばかりですが、、、

スピードを最大限に引き出しながら、前後左右にジャンプしたり、切り返しを繰り返したり、腰をひねりながら走ったりするため、慣れないうちはやはりケガのリスクがあります。

足首の捻挫、肉離れ、シンスプリント、ジャンパー膝、アキレス腱炎、足底腱膜炎、膝の靱帯損傷など。

初心者は、最初から激しくスピードや負荷を上げて行わないようにしてください。

反復回数を少なくしたり休憩を何度もとったりすることで、無理のないトレーニングをすることを心掛けてください。

ちなみに僕もこの前、久々に炎天下のなか20本くらいラダーをやってみましたが、途中で倒れるかと思うほど疲労困憊でした。けっこう激しい運動量だなと実感しました。

真夏にやる場合は、くれぐれも熱中症に気を付けてくださいね ^^

まとめ

いかがでしたか?ラダートレーニングのスゴイ効果!

一石二鳥どころか一石五鳥くらいになりますね。

ラダートレーニングは一見地味なトレーニングですが、野球の上達に必要な動きがたくさん凝縮されています。

色々と工夫して練習に取り入れることで、さらに効果はアップします!

 

トレーニング、頑張りましょう!

それでは。



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